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香港へ行く。
キャセイの機体のグリーンは、香港の海の色に似ている。
前回はずっと香港島にいたが、今回はほとんど九龍島にいた。
朝起きて、町の定食屋で焼きそばを食べる。
ひとりで入っても平気そうかと、おどおどした気持ちで店の中を伺っていたのは二度目までで、今はもうほとんど平気になった。
昼、公園で鳥を見る。
それから町のスーパーマーケットで買い物をする。
お腹がすいたらそのあたりの定食屋で食事をする。
ただそれだけ。
香港はいい。
西洋と東洋のデザインも、金持ちもそうでないものも、洗練も野暮も、すべてが大きな渦に巻かれてマーブル模様を描いているようだ。カラフル、パワフルという凡庸な形容すら飲み込んで、香港はひとつの大きな生き物のよう。
今年は広東語を少し覚えたい。
あ、あと、歯の矯正をしてみたい。もう少し仕事を楽しくしたい。
昼食の時間に厳格にこだわり、中韓を否定し、男性社員はすべて女性社員を性的な目で見ていると執拗に言いつのる上司、気は悪くないが気がきかない、電話の取次ぎひとつ出来ない同僚たち、仕事ができないにも関わらず私の倍の給料をもらっている男たち、どれもこれもうんざりしている。
香港に行ったらすこし元気になった。
今回買って帰ったのは、赤い的士のミニカー。