いけすかない女がいる。

 悪い人でもないし、とりたてて美女であるわけでも目を背けたくなるような容姿であるわけでもない。

 何が気にいらないのかを考えた。

 

 人気が出るものは、キラキラしているものかヒリヒリしているものかのどちらかだと思う。ほのぼの枠もあるにはあるが、ほのぼのの後ろは大体キラキラかヒリヒリである。

 不遇な生まれや環境からコンプレックスを抱えて時には無様な姿を晒す、あるいはたとえ何不自由なく生まれていても転落に寄って行く人々は、ヒリヒリ。

 何もかも満たされていて感謝に満ちた日々を送り、それが創作や表現につながっている人は、ヒリヒリ。

 

 彼女はそのどちらでもない凡庸な人間なのだが、その時一緒にいる人間(大体多少有名な人)のタイプに迎合していくのだ。

 例えばヒリヒリタイプの人といるときは、自分もコンプレックスを抱えて暗い人生だった…と言い出し、キラキラタイプの人といるときは、自分もお嬢様育ちで人の汚い感情などとは縁がないタイプである、と言い出す。

 そのうえ、話はいつもつまらない。

 

 それで仕事を細々と取っているのだから、それが彼女のテクニックでもあるのだろうが、いつもなんとなく釈然としない。

 社会はそれなりのお世辞や迎合で機能している部分もあるし、コネや擦り寄りも使えるなら使えば良いと考えているのだが、彼女に関してはとにかくなんだか「いけすかないやつだな」という気持ちがぬぐえない。話がつまらないというところもそれに拍車をかける。

 家と家族とペットとブランドものを所有し、時間に縛られない仕事を選び、有名人の腰ぎんちゃくで仕事を取っている…という私とは真反対の上級民族に対しての個人的なひがみなんだろうな。あと顔が微妙なところが気に入らない。何もかも凡庸なのに自分がそうではないと精いっぱい主張している姿が醜悪だとも感じる。

 日頃は思い出さないが、ふとした時に現れて、「ああやっぱりいけすかないな…」と感じる程度のことなんだけど。